南アフリカ公演から

1999年10月に参加した南アフリカ公演「Japan Festival '99」の報告


現地での反響

日南ア文化交流のための「Japan Festival99」津軽三味線コンサートでは、ケープタウンのニコラマンシアター(現地ではニコシアターと呼ばれる)、ケープタウン大学でのワークショップ、南アで一番有名なヨハネスブルクのマーケットシアターでの3会場で開催された。

まず初日はニコシアターの「Opera Foyer」,2日目は「Theater Foyer」で開かれた。

いずれも収容人数120名と少ないが、こちらでの音楽演奏会は大体この規模で行われることになっているそうだ。

南アで初の津軽三味線コンサートとあって、現地在住の日本人と黒人、そして多くは白人の観客で満席となり、リズミカルな津軽三味線の音色と唄に酔いしれて、大変な反響であった。コンサート後のレセプションでは興味深い質問が多く寄せられ、歌詞の意味も分からない津軽民謡でも、「哀愁のある唄がとても心を打った」等、言葉の壁を越えて感動していたようだ。また楽器自体にもたいへん興味を示していろいろと質問が飛んできた。

次に2日目、ケープタウン大学でのワークショップであるが、音楽学科のリサイタルルームで開催された。あらかじめ用意した原稿をもとに、通訳を交えて演奏者の紹介と三味線の構造、歴史、津軽三味線ブームとその背景、黒人ブルースと津軽三味線の共通点等の解説を交えて約1時間の演奏と唄をライブ形式で披露した。他の授業の合間に約60名の学生が聴講に訪れた。1曲1曲に大拍手が送られ、特に山本竹勇/丸山竹仙の二重奏と高橋栄山の即興曲、そして須藤雲栄の旧じょんから節等は大好評であった。

楽器もすぐそばで音の作り方等を詳しく説明し、講演後も多くの学生から三味線について質問が寄せられ、日本の楽器に対する興味深さが窺い知れた質の高いワークショップであった。

ヨハネスブルクでは収容人数400名のマーケットシアターで開催された。会場は歴史が古く、大変市民にも親しまれている南アでも一番有名な劇場である。

13日の初日はオープニングということもあり、大使館でも招待状を出していたが、14日と15日は出していない。前年まではほぼ招待ベースでの公演だったために、見たい人が見れないという状況であったが、今年は幅広い市民に見てもらうことになった。

13日は130名程度、14日は80名程度で、400名の収容人数からすると少ないように見えるが、南ア人演奏家の音楽会においては50名程度が集まれば大成功と言われている。最終日は200名程、人種を超えた聴衆が一行の演奏と唄に酔いしれた。マスコミ関係者の多くは横の連絡で、ほぼ全ての新聞社が聴きにきており、また多くの音楽関係者も来ていた。係りの大使館員が次ぎのような感想を述べているので紹介します。

 高橋栄山御一行のヨハネスブルグ公演が無事終了しました。だんだんとボルテージの上がった今回の演奏。これは本当に素晴らしいものでした。

 聴衆も興奮してしまって、モギリをやっていた私のところにみんな詰め掛けて、公演の素晴らしさを語るなど正にプロモーター(?)冥利につきます。休み時間の間、公演終了後、本当に沢山の聴衆の方々が興奮しながら私に素晴らしかった!と語り掛けてきました。

 さて、公演の内容ですが、ヨハネスブルグ最終公演にすべてを懸けたといっても過言ではない

 今回の演奏。素晴らしい、本当に素晴らしい、、、。山本竹勇、丸山竹仙、野崎竹勇雅、3氏の素晴らしい演奏も然ることながら、高橋竹山師が乗り移ったが如く素晴らしいソロを聴かせてくれた高橋栄山先生。本当に本当に、みんな興奮していて、、、私も身を乗り出して興奮してしまいました。

 上記のように当日の様子を語っている。またいずれの公演もスタンディングオベージョンの嵐という最高の賛辞をいただくなど、公演は大成功に終えることが出来た。

 

成果と意義

 当初はチャリティーということであったが、前年までと違い、招待客を少なくして幅広く一般大衆に聴いてもらうことになったため、大使館の主催で入場料を徴収するということが南ア政府からクレームがつき、フリーチケットで開催の運びとなった。

 しかし、一般大衆に聴いていただいたことで、上記の公演内容のように、南アで初の津軽三味線公演はたいへん大きな成果をあげたことになる。また日本の津軽地方文化であった津軽三味線が人種を超えて世界に受け入れられたことを証明し、両国の文化交流の橋渡しとして大きな役割を担った。

 

現地の文化事情

 日本と南アフリカは、南アフリカ旧政権がとっていた人種隔離政策に反対する立場から、永らく外交関係はもちろん文化交流等の関係も断っていた。その後、民主化が確保され、マンデラ政権が成立したのを契機に日本は外交関係を再開し、現在に至っている。

 こうした事情もあって、文化面でも相互理解を深めるべく、両国の交流活動を再開し、少しずつではあるが対日理解を深めるべく努力している。

 こうした活動の一環として1994年以来、南アフリカの方々に日本文化に触れていただく機会を提供すべく、在南ア日本大使館が主催して日本文化週間を行っている。

日本の伝統的な文化紹介から、近代音楽、日本映画、両国の子供達の参加による絵画コンクール、弁論大会など、現代日本が持つ様々な側面をバラエティーに富んだ文化行事を通して、日本の文化、社会を紹介している。

 現地では、三味線はまだまだ馴染みが薄く、また日本との文化交流が始まって10年に満たないというこもあり、且つ遠隔地にあるということから我が国の伝統芸能一般については未だ理解が浸透していない状況である。

 それから日本では土日にコンサートを行うことは普通であるが、南ア国民は土日にコンサート会場へ足を運ぶということが少ない。


思い出のアルバム| |TOPページ